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2014年5月30日 (金)

大局観 - 羽生善治

大局観
- 自分と闘って負けない心

羽生善治
1970年、埼玉県生まれ。将棋棋士。中学3年生で四段、プロ棋士になる。96年、王将位を獲得し、名人、竜王、棋聖、王位、王座、棋王と合わせて「七大タイトル」全てを独占。将棋界始まって以来の七冠達成。
棋風はオールラウンドで幅広い戦法を使いこなし、終盤に繰り出す妙手は「羽生マジック」と呼ばれ多くのファンを魅了している。

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「大局観」とは一般には馴染みがない言葉だが、「大局を見て考える」などの表現ではよく使われる。「気を見て森を見ず」という格言があるが、これは「部分だけしか見ず、全体を見ていない」という意味でその反対が「大局観」である。

すぐに勝ち負けがはっきりする勝負より、最後までぎりぎり均衡が保たれている、どんな結果になるかわからない、そんな勝負が理想である。

勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし

体力や手を読む力は、年齢が若い棋士の方が上だが、「大局観」を使うと「いかに読まないか」の心境になる

選択肢が多ければ多いほど、いろいろな可能性があるということになるが、そのぶん、迷いや後悔は多くなる。・・・複雑な状況で決断を下す時は、この「大局観」で無駄な「読み」を省略でき、正確性が高まり思考が速くなる

たくさん時間を使って自力で考え続けなければならない。そうやっていくうちに、本当の「地力」がついていくようであった。・・・「鍛えの入った一手」とは将棋界ではよく使われる言葉の一つで、負けにくい一手、慌てない一手、今まで苦しい思いをしていなければ指せないような一手を形容する。

将棋の世界は、リスクをとらなければ棋士の成長は止まってしまう。・・・むしろ、リスクをとらないことが最大のリスクだと私は思っている。

マイナス十点の手をお互いに指したとすると、差し引きイーブンにはならず、あとにミスを指した方がマイナス二十点になってしまうのだ。

シビアで現実的な世界であればあるほど、ゆとりやウイットが必要になのだと教えられたような気がした。

「可視化が難しいテーマ」が集中力のトレーニングとしてよい

将棋の場合、対局中にパッと良い手が閃くとか、たくさん手が読めるとかいうことも一つの才能だと思うが、もっと根源的なものとして、「地道に、確実に、一歩一歩進み続けることができる」ということこそが、最も素晴らしい才能だと思うのだ。

将棋を教える時に肝心なことは、教わる側は何がわかっていないかを、教える側が素早く察知することだと考えている。

簡単で基本的な問題がわからないときには、自分の弱点が明確に浮き彫りになっているとも言える。複雑な問題は複雑な構成になっているので、自分の資格や盲点ははっきりしない。

棋士にとって大切な資質の一つに、こうした「打たれ強さ」がある。

情報や知識を集めたとしても、それだけでは大きな意味や価値を持たない、あるいはその価値は日々、下落を続けていると私は感じている。なぜなら、知識は実際に活用することによって、初めて意義を持つからだ。

ずっと情報ばかり食べていると、ふと気がついたとき、”情報メタボ”になっている可能性があるのだ。・・・情報や知識が先入観や思い込みを作ってしまい、アイデアが浮かばなくなってしまうのである。

(ヨットレースで)同じ航路をとっても勝ち目がないので、つい、思い切った手を打ちたくなるのだが、それをするとうまくいかないことが多いのだそうだ。

ツキを頼りにするのは、自分自身への信頼が揺らぎ、心が弱くなっている証拠ともいえる。

何でもかんでもゲンを担ぎジンクスを気にしていたら、がんじがらめになって身動きがとれなくなってしまう

順位戦は、負ければ降級というシビアなシステムなので、どんどん上をめざしていくというよりは、まずは現状維持(残留)をめざし、その目標が達成されてから、初めて上を見ることができる。つまり、ツーステップを踏んでいくという感じだ。

考えていく方向性としては、基本的に人間とコンピューターは反対方向に行っている。たくさんの手を考えるコンピューターと、極力手を考えない人間―――。その違いは鮮明だと思う。

今、再び”野生のカン”が必要な時期に来ている。私にはそう思えてならない。

「若手にあって、今の自分にはないもの」を、短期間で素早く吸収し、修正すべきところは修正していくということが大事だと思っている。

私はこれまで、何と闘うという目標を立ててやってきていない。信じていただけないと思うが、常に無計画、他力思考である。突き詰めると「結論なし」となる。

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