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2014年3月10日 (月)

コミュニケイションのレッスン - 鴻上尚史

鴻上 尚史
1958年愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒業。
在学中に劇団「第三舞台」を結成、以降、作・演出を手掛ける。

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「30年以上演劇の演出家を続けてきて、一つだけ分かったことがあります。それは、”コミュニケイションは技術だ”ということです。・・・コミュニケイションは、まさにスポーツと同じようにやればやるだけ上達します。・・・1年に1回しかバッターボックスに立っていいないのにヒットが打てないと悩むことは、1年に1回しか人前でスピーチしていないのにうまくいかないと悩むことと同じです。・・・コミュニケイションが下手なことは、あなたの人格とはなんの関係もありません。」

「多くの人は、コミュニケイションのやり方を学ぶのではなく、親のコミュニケイションのやり方を受け継いでいるのだと思います。・・・ほとんどの俳優は、自分の親の考え方(多くは母親でした)を意識的にか無意識的にか引き継いでいるか、反発して逆の性格になっているかでした」

「あなたが口から出す言葉には、”情報を伝える”という機能と”感情やイメージを伝える”という機能があります。・・・そういう人(会社で管理職として出世している人)は、普段から、言葉を”情報を伝える”面だけ使っていて、”感情やイメージを伝える”という面をおろそかにしがちなのです」

「グループ旅行のおばちゃん達と電車で出会うことがあります。・・・おばちゃんたちは、自分の仲間、つまり”世間”を大切にしているのです。(後ろから乗ってきた乗客を無視して座席を確保する)このおばちゃんは、”世間”の中では、親切な、仲間思いの、温かい人のはずです。この時、続いて乗ってきて、ムッとした顔で立っている乗客は、おばちゃんにとって”社会”です。つまりは、何の利害関係も人間関係もない他人なのです」

「”世間”とは、あなたと利害・人間関係があるか、将来、利害・人間関係が生まれる可能性が高い人達のことです。・・・”社会”とは、今現在、あなたと何の関係もなく、将来も関係が生まれる可能性が低い人達のことです。・・・日本人は、”世間”と”社会”、二つのまったく違った世界を生きていると僕は思っています

「欧米で”世間”は存在しません。すべてが”社会”です。欧米を旅行すると、デパートや商店に入る時に、入口のドアを手で押さえて、後ろから来る人のために待つことが当たり前になっていることに気づきます。・・・乳母車を押している母親が駅の階段の前で立ち止まったら、欧米では、ほぼ100%の確率で誰かが声をかけて、一緒に乳母車を持ち上げます。・・・日本人が、他の国の人たちと違って冷血だからでしょうか。あなたは直感的に、それは違うと思うはずです。・・・それは、自分と関係のない”社会”だからです。私達日本人は、自分とは関係のない”社会”に生きる人に、気軽に声をかけることに慣れていないのです

「”世間”は本音、”社会”は建前、という考え方は、深く日本人に根を下ろしています。”世間”は今までの生活に慣れ親しんだ空間だから、本音が言える。”社会”は強引にトップダウンで降りて来た考えだから建前、ということです日本人は基本的に会議で本音を言うことが苦手です。・・・そして、会議が終わった後、夜の飲み屋や喫茶店、給湯室やオフィスの片隅で”あれはないよね”とか”あたしは本当は反対なんだよね”と語り合うのです」

「日本だと自分より年下から言われた意見を、まず否定してから始める人が多いようです。・・・ネットの意見は8割がネガティブな書き込みだと言われています。・・・自分の意見を言うのに、一番簡単なのは、相手を否定することです。代わりの案を出したり、相手のいい所を見つけたりするのは難しいのです。・・・けれど、それでは、建設的なコミュニケーションは始まりません」

「斎藤孝さんの命名なのですが、人間には”教育欲”というものがあります。”人を教育したい”という欲望です。・・・言葉は悪いですが、売れていない人(俳優)ほど熱心に若者に教える傾向があります。本当に売れていて、周りから尊敬されている俳優やスタッフは、あまり熱心には酒の席では語りません。・・・ですから、あなたの話し相手がよっぽど売れていたり社会的地位が高かったりしない限り、”教育欲”を満足させていないはずです。・・・飲みたがったり、話したがったり、アドバイスをしたがったりする先輩や上司・大人は”教育欲”を持て余している人の場合が多いのです」

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