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2012年8月 7日 (火)

知ってるつもり?サッカーのウソとホント

ドイツのS級とA級ライセンス所持者が会員になれるBDFL(Bund deutscher Fussball-Lehrer)という組織では、EUROやワールドカップ、チャンピオンズリーグ、ブンデスリーガなどの分析をもとに、年に1回大きな会議”ITK(Internationaler Trainer-Kongress)”が開かれている。

 2011年に行われた第54回の会議では、ドイツサッカー協会やドイツ代表、1.FCケルンなどのスタッフが講演や指導実践を行い、ザマーやクロップ監督などによる討論会も行われた。

”スポーツ科学者Dr. Roland Loyの講演”
(ベッケンバウアーのもとドイツ代表やバイエルン、マルセイユでスタッフを務める)

 ギリシャの哲学者ソクラテスは「私は、自分が何も知らないことを知っている」と言いました。それに対して、ジョゼ・モウリーニョはチェルシーの監督だったとき「私はサッカーのすべてを知っている」と言いました。どちらの言葉がより的を得ているか、次のような質問を考えてみました。

「サッカーの戦術において何が正しくて何が間違っているか、我々はどれだけ知っているのか?」

「どの発言が、あくまで予測でしかないのか?」

「どの発言が、サッカーの戦術において間違ったものであるのか?」

 何人かのワールドクラスの選手が言った言葉も挙げてみましょう。

「ピッチが濡れていたら、二列目から積極的にシュートを打つべきだ」

「我々はもっとサイドから攻撃しなければいけない」

「ロングシュートは勝利に導く」

「ファールされてPKをもらった選手がPKを蹴るべきではない」

「我々はもっと走るべきだった」

 私がこういったことを考え始めたきっかけは、シュトゥッツガルトでデットマール・クラマーに会った時でした。彼は言いました。「ロイさん、サッカーの戦術の事に関しては全て疑ってみることです。疑うことが進歩の始まりです」それから私は機材を作り、代表戦やヨーロッパのカップ戦、ブンデスリーガなど3000試合以上を攻守にわたり分析しました。

”勝った試合のメンバーは変更しない”

 試合に勝った先発メンバーを変更せずに次の試合でも使うのはよくあることです。2000試合でこのような点を確認することができました。メンバーを変更しなかったチームは36%の試合に勝利しました。しかし、メンバーを変更したチームも36%の割合で勝利を収めました。よって、この発言を正しいとは言えません。

”ファールされた選手はPKを蹴るべきではない”

 2007/08シーズンのバイエルン対ブレーメン戦でルカ・トーニがPKを外した後、ベッケンバウアーがこの発言をしました。多くの人々は、このことは”鉄則”であると賛同するでしょう。分析結果によると、ファールされてPKをもらった選手以外がPKを蹴った場合、75%が成功しました。ファールをされてPKをもらった選手も、同じく75%成功しました。ということは、ファールを受けた受けないということだけでキッカーを決めるのは疑問です。

”中央よりもサイド攻撃が有効である”

 ARD(テレビ局)の解説として、ギュンター・ネッツァーはこの言葉をよく使いました。この発言の根拠は、コンパクトな中央よりもサイドの方がスペースが多いということでしょう。1万以上の攻撃を分析した結果、サイド攻撃から得点につながったのは1,5%でした。しかし、中央突破から得点につながったのも1,5%でした。さらに、中央からの攻撃は、サイド攻撃よりもシュートで終わる回数が多いという結果がでました。これらのサッカーに関する発言は、客観的な分析によると正しいとは言えないことになります。

”コーナーキックはゴールに向かうボールを蹴るべき”

 このアドバイスはFIFAの教本でも確認することができます。5000のCKを分析してみました。結果、CKのボールがゴールに向かうか離れるかということは大きな違いはありませんでした。どちらも2%の確率でゴールが決まりました。

”1:0でリードしているチームは負ける”

 先制点をとったチームは、油断して集中力が切れるということでしょうか。しかし、先制点をとったチームの67%が勝利を収め、先制点をとられたチームが勝利したのはたった11%でした。そして、22%が引き分けに終わりました。

”フェアープレーが勝利に導く”

 ファールの影響は、よく議論されるテーマです。コーチによってはファールを積極的に減らし、コーチによってはファールを推奨します。3000試合の分析の結果、ファールの多かったチームが37%勝利し、ファールの少なかったチームは35%勝ちました。大きな差は見られませんでした。

”ボールポゼッションは勝利につながる”

 ジョゼ・モウリーニョがチェルシーの監督だった時、監督としての成功はボールポゼッションに基づくと言いました。同じように、高いボールポゼッション率が現在のバルセロナの勝利につながっていると言われています。ボールを持っている間、敵はシュートを打つことができません。分析はどうでしょうか?1000試合の分析の結果、高いポゼッション率のチームが勝ったのは34%でした。ポゼッション率の低かったチームはより多く勝ちました。

”より多くシュートを打ったチームが勝つ”

 シュート数がどれだけ試合結果に影響があるでしょうか?敵よりもシュートを多く打ったチームが勝ったのは45%、シュート数が少ないチームの勝率は55%でした。良い例は、EURO2004のギリシャでしょう。6試合すべてにおいて、敵チームよりも少ないシュート数でした。6試合の数字で見ると、ギリシャが52本に対して、対戦チームの合計シュート数は103と、ほぼ倍です。でも、ギリシャはヨーロッパチャンピオンになりました。

”1対1に勝てば試合に勝つ”

 この発言は、サッカーの歴史のなかでずっと言われてきたものでしょう。私は数年前、ロンドンの図書館で、1952年に書かれた記録を見つけました。そこにも、「1対1により多く勝てば、試合に勝つ」と書かれていました。多くのコーチやサッカー関係者は、このことは80~90%の試合に当てはまると思うかもしれません。
 私の研究によると、対戦相手よりも多く1対1に勝ったチームの勝率は40%でした。1対1を避けるべきだということではありません。しかし、上の発言を決定づける結果ではありませんでした。

”より多く走ったチームが勝つ”

分析結果は明確で、対戦チームよりも走る距離が少なかったチームのほうが高い勝率となりました。


”センタリングはチャンスを作り出す”

 オットー・レーハーゲルがブレーメンの監督だった当時言ったことです。センタリングからゴールが決まったのは2,4%です。ほかの言い方をすれば、1点取るのに46回センタリングを上げる必要があります。

”2列目からもっとシュートを打つべきだ”

 敵のゴールから離れれば、プレッシャーも減るかもしれません。しかし、シュートの滞空時間が長くなり、GKはより反応するための時間を得ます。ペナルティエリア内からのシュートは7本に1本が成功し、ペナルティエリア外から1点取るためには37本のシュートが必要で、27m以上離れた所からミドルシュートで点をとるためには70本のシュートが必要という統計が出ています。

”女性はサッカーを知らない”

このテーマは、ギネスビールがあるビアホールでおかしな学者によって語られました。1000人の女性と男性を対象に「オフサイドルールを知っているかどうか」調査しました。結果、男性は53%、女性は68%でした。

終わりに:

あなたのサッカーに対する知識や、サッカーに関して日々口にされている言葉をすべて信用すべきではありません。サッカーの戦術やプレーに関して話をするなら、1978年にワールドカップで優勝したアルゼンチン代表監督セザール・ルイス・メノッティの次の言葉を気にしてみることです(クリンスマンの名前は一例として出されたのもですが)。「誰も、クリンスマンが全ての事を知っていると言わないでしょう。サッカーはとても複雑で、私も、自分がサッカーの真実を知っている一人であるなんて言うことはできません」

ITK2011より部分的に翻訳
 

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