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2011年11月15日 (火)

菊と刀 - ルース・ベネディクト ①

Ruth Benedict(ルース・ベネディクト)
1887-1948


ニューヨーク生まれ。文化人類学者。
第2次世界大戦中の1944年にアメリカ戦時情報局の依頼で日本関連の調査を開始し、2年後、その研究成果を「菊と刀」として出版。

まえがき

・・・ある人は言います。あまりにも西欧の主観によって日本を断じた偏見に満ちた書籍であると。また、ある人は、調査に不十分なところはあるとはいえ、主張するところはもっともで、日本文化を語る貴重な書籍だと。
・・・あまりにもあからさまに突きつけられた日本人の価値観に、思わず日本人が拒絶反応をし、本書の中に見える事実誤認の事例とリンクして批判の対象となってしまうという側面もまた否めません。
 そこに描かれているのは少なくとも70年以上前の日本の姿であり、中には江戸時代から現在に至る日本の価値となります。それが変質し、形を変えて現在に受け継がれていることを、我々が気付くよい機会となる書籍ではないでしょうか。

001

第1章 日本という研究課題

 日本人は、今までアメリカが戦ってきた相手の中で際立って異質な民族です。・・・そしてこの日本人のものの考え方こそが、最も厄介な事柄なのです。我々は、戦争に勝利するためにも、日本人の習性を理解しなければならないのです。

・・・菊を栽培するにあたって、それを芸術の高みにまでもってゆく人々について記したあとで、続編を出版するとして、刀や武士を崇める文化について執筆する必要があるでしょうか。しかし、この矛盾は、日本人を語る際にはごく当たり前のことなのです

第2章 戦時下の日本

日本が戦争を正当化するための考え方すら、アメリカ人のそれとは正反対のものでした。・・・日本は、もしもすべての国々が独立し自由を獲得することになれば、世界に混乱が生じると考えます。すなわち、序列による秩序をつくるために日本は戦う必要があったのです。・・・彼らにとって最も大切なのは、階級的な上下関係への強い信奉です。

・・・日本人は物質文明より精神主義が勝ると考えます。・・・これは、物質を信ずるアメリカ人への、精神を信ずる日本人の戦いなのです。・・・日本の政府は民間に対しても、物質に対する精神至上主義に基づいた指導を貫きます。・・・アメリカ人にしてみれば、そんなこと(肉体は死んでも魂が体を動かすこと)は嘘だと思うでしょう。しかし、教養ある日本人はそれを聞いても笑いません。彼らは、日本人はこの話を信じていると確信しているのです。魂は鍛えられ得る。

・・・日本は安堵の気持ちや士気は、事態への心の準備ができているかどうかによるものだと言っています。たとえば、サイパンの陥落やフィリピン防衛の失敗といったまずいことが起きたとしても、日本人はそうなることをわかっていたと言うのです。

・・・人々が消耗品扱いされている最もひどい事例は、降伏を認めない方針でした。・・・名誉を保つためには闘って死ななければならないのです。

第3章 分相応に振る舞うこと

・・・平等ではない状況が何百年にわたって人々を支配してきました。序列の中で生きることは、彼らにとって息をするのと同じように自然なことなのです。・・・いかに日本が西欧化しようと、そこは未だに序列の国です。あらゆる挨拶や、人との接触方法一つをとっても、人々の間の関係性が影響を与えています。

・・・人々は「維新」という声をあげはじめていました。それは過去に戻り、昔のやり方を取り入れようということでした。革命とは正反対です。

第4章 明治維新

・・・上に立つ者も、その下で働く者も、与えられた役割を逸脱することはありませんでした。その役割の中で分をわきまえている限り、全てはうまくいったのです。彼らは安堵するのです。そのことが、ちょうどアメリカが平等で自由なビジネス活動を大切にするように、日本人にとって大切なことなのです。・・・日本人は自らの「分」という考え方を他国が受け入れなかったときに、瓦解していったのでした。

第5章 過去と世間への負い目の中で

・・・この「お世話になっているから」という意識は、日々のすべての行動や決裁の基準となっているのです。西欧人は、世の中に対してそのように感じることはほとんどありません。そして、日本人は西欧人の態度はよくないと感じます。

・・・我々(アメリカ人)が、愛はどのような義務もなく、自由に与えられる何かであると考えることとは異なり、(日本人にとって)その本質的な意味は、「負債」なのです。

・・・それが誰であるかというよりも、誰に恩を感じるかが重要なのです。第二次世界大戦中、恩をより強く意識させるために、全ての煙草が天皇の名前によって下賜されていました。神風特攻隊のパイロットは、天皇への恩に報いようとしていたのでした。

・・・ドイツのような国においては、両親は、自分たちの子供にいうことをきかせようと懸命になります。しかし、日本では、親のいうことに従うために、子供の方が懸命になるのです。

・・・一方で人々が恩を望まないことも多々あります。日本人は見知らぬ人からちょっとした好意を受けることを望まないのです。・・・特に、改まっていない場所では、日本人は恩に関わりたくないようです。・・・「負債」を負うことは辛いことです。従って人々はそれに対してまずは躊躇するのです。・・・こうした些細なことを気にかけるのは、アメリカのギャングなどに通じる意識です

第6章 一万分の一のお返し

恩は負債です。従って、それは返さなければなりません。しかし、日本ではそのすべての返済は、まったく別の概念に属しています。・・・愛は心の問題で、それはこうした貸し借り無しに与えられることが最善です。・・・我々はこうしたことを、お金について考えるときのようには捉えません。それはビジネスで成功した時に求める報酬ではないのです。

第7章 最も困難な恩返し

・・・(アメリカ人は)誰かから手紙や贈り物を受け取ったとき、その人は返済をする必要はありません。しかし、日本人はもし義理を返さなければ、お金を返さないことと同じことだと思うのです。ということは、彼らは常に人が言ったり、したりした些末なことを覚えていなければならなくなります。・・・義理を果たさないことは、西欧の人がお金を返さないことと同じで、もし返済が遅くなれば、その人はさらに多くを返さなければならなくなるのです。

つづく・・・

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