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2011年6月25日 (土)

恥の殿堂 - 落合信彦

落合 信彦

作家・国際ジャーナリスト。アメリカのオルブライト大学、テンプル大学大学院で国際政治学を専攻。オイルビジネスに従事した後、ジャーナリストに転身。主催するサイト「勝ち組クラブ」。愛称ノビー。

「恥の殿堂」ベスト10

1 ブッシュの恥
2 サブプライムの恥
3 中国の恥
4 ビル・クリントンの恥
5 草食系男子の恥
6 米医療保険制度の恥
7 テレビキャスターの恥
8 弁護士の恥
9 モンスターペアレントの恥
10 美食ガイドの恥

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はじめに

・・・英語で「hall of fame」-名誉殿堂-という言葉がある。ある分野で特筆すべき業績を残した人の名誉を称える顕彰館のことをいう。とすれば、現代の日本は「hall of shame」-恥の殿堂-に入るべき民族となり下がってしまった。・・・近年、『国家の品格』や『女性の品格』などがベストセラーとなったが、それも品格のない日本人が、それに憧れ、手軽に身につくのではと錯覚して買い求めた結果だろう。あれらの本は、「日本人には品格がない」という思いを込めて書かれたものだと私は理解している。

 しかし、「恥の殿堂」で顕彰されるべき日本人ばかりになってしまった今、生半可な表現では伝わらない。はっきりと「お前たちは恥知らずだ」と言ってやらねばならない。それが本当の親切というものだ。・・・誰しも自分の恥を指摘されて、いい気分はしないだろう。それでも真摯に耳を傾ける勇気のあるものだけが、恥を捨て去り、本当の名誉に近づくことができる。あなたがその一人であることを私は願っている。

第1章 日本編

政治家の恥


 日本に存在する恥で最も罪深いものが政治家である。・・・かつて日本にも気骨のある政治家がいた。・・・今の国会議員はどうだろうか。彼らの行動における優先順位は、何よりも「選挙」である。現職の自民党大物議員がかつて私に言ったことがある。

「落合さんは政治家にはなれませんよ」
「僕は政治家なんかになりたいとも思いません。でもどうしてなれないんですか?」
「政治家は、国民が聞きたいことを言わなければならないんです。国民が嫌がることは絶対に言ってはいけない。落合さんみたいに、日本人にとって耳の痛いことは絶対に言ってはいけないんです。そうしないと政治家を続けていくことはできないんです」
呆れた私は思わず、
「あなた方はいつ仕事をしているんですか?」と聞いてしまった。
これが日本の政治家のメンタリティである。

・・・ここでポリティカル・ジョークを一つ。

胡錦濤が日本を訪れる。ぜひ日本の小学校を見学したいというので首相が案内役を買って出る。二人が教室に入っていくと生徒たちが何やら大声で話し合っている。
「何を話し合っているのかね」
首相が尋ねる。生徒の一人が答える。
「誰が一番大きな嘘をつけるか競争しているんです」
「それはよくないな」
と首相。
「私もここにいる中国国家主席もこれまでの生涯で嘘をついたことなど一度もなかったよ。いつも真実一路だったな」
「その通りですよ」
と、胡錦濤がにこにこ顔で言う。
「日本の格言にもあるでしょう。『嘘は泥棒の始まり』と。嘘は絶対にいけません」
生徒たちがいっせいに拍手する。一人が立ち上がって言う。
「おめでとう!おじさんたちが優勝です!]

・・・自分に国会議員の資格がないのに何食わぬ顔で居座り続けるのも恥だが、彼のような人間を国会議員に選出した国民の側も恥ずべきことに気づいたほうがいい

マスコミの恥

 「政治の恥」を助長しているのは、間違いなくマスコミである。・・・テレビは政治を劇場化し、善悪の構図に単純化して報道する。とにかく面白い画が撮れる場所に殺到する

・・・レーガン政権末期の時、大統領のスピーチでおかしなところがあった。彼は退任後の92年にアルツハイマー病と診断されるが、今思えばその時すでに病の兆候が出ていたのだ。しかし、マスコミは誰も指摘しなかった。それを指摘して大統領に恥をかかせても、国家国民には何のプラスにもならないというモラルがマスコミの間で共有されていたからだ

50年代に活躍したテレビマンのエド・マロー
「50年後や100年後の歴史家が今のテレビ番組を1週間分見たとする。彼らの眼に映るのはおそらく、今の世に蔓延る退廃と現実逃避と隔絶でしょう。テレビは人を教育し、啓発し、心さえ動かします。だがそれはあくまでも使う者の自覚次第です。それがなければテレビはメカの詰まったただの箱なのです」

・・・90年代に入ってからは、料理番組からの依頼もあった。「落合さんの好きな料理は何ですか?」と聞かれて、「ゆで卵だよ」と答えて断ってしまった

親の恥

私はファーストクラスのシートに座っていた。取材を終えて疲れていたので休もうと思っていたが、うるさくてとても眠れない。子供が騒いでいるのだ。あまりにうるさいので、CAを呼んで、「うるさくてみんなが迷惑しているから、静かにさせてほしい」と頼んだ。CAはその子供の父親に注意した。すると、(レストランでの出来事と同様に)またあの一言である。
「高い金を払っているんだから少しくらいいいだろう!」


教育の恥

 私はこの30年間、日本の教育システムを批判し続けてきた。教育の間違いはボディーブローと同じで、すぐには決定打にはならないが、それを受け続ければいずれはノックアウトされる。そのボディーブローの結果が今我々の目の前にあると思えてならない。
 かつてフランスの哲学者、ジャン・ジャック・ルソーは子供を”ノーブル・サヴェッジ(高貴な野蛮人)”と呼んだ。教育を受け、社会に溶け込むことで野蛮性は失われて、人間本来の気高さに生きるという意味だ。しかし、今の子供たちはその野蛮性を脱ぎ捨てることなくそのまま大人になり、”ひ弱な野蛮人”としてその狂暴さを増幅させている。

・・・たとえば、モンスターペアレントがことあるごとに学校に様々な無理難題を押し付けて教師たちを困らせる。彼らが考えているのは自分の子供のことだけ。他人の迷惑や教育現場全体にもたらす悪影響など考えない。今の日本人の心を如実に象徴している。

・・・大学時代の教授が「教育は魂の設計者」と語ったことを鮮明に覚えているが、・・・人間形成のための教育が、”凶育”となり、さらに”狂育”となりかけているというのは言い過ぎだろうか。

スポーツの恥

・・・報酬高額化の流れの中で、選手たちは年棒のアップをわかりやすくアピールする材料として、記録更新に血道をあげるようになっていった。どんな人種でも努力すれば最高のプレーで名誉と富を得られるという名選手たちの姿は、アメリカンドリームのお手本だ。しかし、カネにこだわるあまりにステロイドという安易な肉体改造の誘惑に負け、少年らの夢を壊してしまうのでは本末転倒。

・・・日本の野球場に漂う重苦しい悲愴感も気になる。日本人は野球を武士道のごとく「野球道」などと称し、選手にサムライのような孤高の精神を求める。・・・野球はスポーツである。本来、楽しむべきものなのだ。たしかにメジャーの超一流の選手たちはファンに最高のプレーを見せようと必死に頑張る。しかし、その根底に流れているのは、「ベースボールは楽しむべきもの」という前向きで明るい精神である

第2章 世界編

アメリカの恥


・・・アメリカがいつの間にか経済面でも政治面でも社会面でも恥の輸出大国になってしまった。モラルの崩壊から派生するグリード(強欲)、政界や財界のスキャンダル、自分さえよければいいという超エゴイズム・・・・・・。

・・・1960年のローマ五輪でカシアス・クレイ、後のモハメド・アリがボクシングでヘビー級の金メダルを獲得した時はアメリカ中が熱狂的に歓喜した。彼は一躍英雄となった。
 しかし彼がアメリカに戻って来た時はどうだったか。故郷のケンタッキー州でレストランに入ろうとすると言下に断られたのだ。黒人ゆえに味わう屈辱である。アリは空しさと悔しさのあまりローマで得た金メダルを川に捨ててしまった(96年のアトランタ五輪で国際オリンピック委員会のサマランチ会長からアリに金メダルが贈られたのはこのような裏があったからだ)

・・・脂肪分たっぷりのジャンクフードを食べれば太るのは当たり前だし、発がん性物質が含まれるタバコを吸えば、がんになる確率が高くなるのも当然のこと。それを製造・販売会社のせいだとして責任を押し付けるのは本末転倒の恥ずかしい行為だ。・・・弁護士が多い社会がろくな社会になっていないことはアメリカを見れば明らかだ

・・・ここでブッシュの性格や文化度、知能指数などをまとめて表わすジョークを伝えよう。

アインシュタインが死んで天国の門に来た。聖ペテロが彼に言う。
「あなたがアインシュタインという証明書はありますか?」
証明書はないが、と言ってアインシュタインは宇宙物理学に関する方程式を書いて見せる。聖ペテロが納得する。

次にピカソがやってくる。聖ペテロはアインシュタインに行ったのと同じことをピカソに言う。ピカソは彼の名画の一つをさらさらと描いて見せる。聖ペテロは感動する。
「あなたはたしかにピカソです。天国にようこそ、巨匠」

最後にジョージ・W・ブッシュがやってくる。胸を張って言う。
「元アメリカ合衆国大統領、ジョージ・W・ブッシュだ」
聖ペテロは、それを証明するものを見せるように言う。ブッシュが怒る。
「もと合衆国大統領に対して失礼じゃないか!」
聖ペテロがなだめる。
「かのアインシュタインやピカソだってちゃんと証明したのだ」
ブッシュは不可解な表情で聞く。
「アインシュタインやピカソって一体何者なんだ?」
聖ペテロがため息をつく。
「あんたは正真正銘、本物のジョージ・W・ブッシュだ。入りなさい」

中国の恥

 アメリカと中国の2大国が世界秩序を決める状態の到来をG2時代と呼ぶ。・・・中国の巨大化の勢いは凄まじく、今後は米中2か国が世界を牛耳るのではないかという見方がG2である。とすれば、中国はアメリカと並んで「恥2」とも称されるべき世界恥大国だ。

・・・北京五輪前、中国政府は1500万の北京市民に対し、「禁煙」「痰吐き」「列への割り込み」「罵声」を”四害”として、撲滅キャンペーンを展開していた。・・・北京五輪を経て、マナーはある程度改善されたところもあるが、・・・”謙虚””素直”という要素は失われてしまっているから、どんなに政府が口うるさくマナーを指導したところで「馬の耳に念仏」でしかない

独裁者の恥

ワシントン・ポスト紙の週末版『パレード』誌は毎年、「世界最悪の独裁者」というランキングを発表している。09年版のベスト10は次の通りだ。

1位 ロバート・ムガベ(ジンバブエ大統領)
2位 オマル・アル・バシール(スーダン大統領)
3位 金正日(北朝鮮総書記)
4位 タン・シュエ(ミャンマー国家平和開発評議会議長)
5位 アブドラ(サウジアラビア国王)
6位 胡錦濤(中国国家主席)
7位 サイード・アリー・ハメネイ(イラン最高指導者)
8位 イサイアス・アフェウェルキ(エリトリア大統領)
9位 グルバングルィ・ベルディムハメドフ(トルクメニスタン大統領)
10位 ムアンマル・アル・カダフィ(リビア大統領)

独裁者には3つのタイプがある。第1は、ナルシストであるということだ。・・・第2の独裁者の特徴は、劣等感である。・・・第3のタイプは、サディストである。・・・独裁者ならいつ寝首をかかれるかと怯えながら余生を過ごさねばならない。世界に垂れ流す恥の代償が高くつくことだけは忠告しておきたい。

人類の恥

・・・私の好きなユダヤの格言に次のような一節がある。
「カネは最良の召使いになるし、最悪の主人にもなる」
今は世界中が最悪の主人に仕えているように見える。本書をここまで読んできた読者諸君は気づいたかもしれない。現代世界に蔓延るいろいろな恥を書き連ねてきたが、どの恥にも根本にはカネに対するグリードが見え隠れしている

・・・ドイツの哲学者ショウペンハウエルは、人間を「欲望の動物」と看破した。・・・若者たちは果てしなき渇望に衝き動かされ、未知の世界に飛び出し、時代を動かしてきた。しかし、デザイアとグリードは別次元だ。グリードの対象は、ただ一つ、カネだけである。・・・結局、人の心から生まれたグリードを克服するのは、人の心から生み出すモラルからしかあり得ないのだ。

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